Constitution · 公式法典

クッション共和国憲法 Constitution of the Republic of Cushion

千九百六十二年九月三日 公布/即日施行

前 文

クッション共和国国民は、千七百五十九年に建国の父クッション・モチーィモッチの志のもとに チープチプ帝国からの独立を達成し、千八百三年の植民地化、千九百三十一年に始まる カタッカター・ソファーの独裁を経て、千九百六十二年に民衆の蜂起によって正統な王政を回復した。

この二世紀半にわたる経験は、わが国民に一つの確信をもたらした。すなわち、 強さを誇る国家は折れ、やわらかさを尊ぶ国家のみが長く立つという確信である。 押されればへこみ、力が抜ければ元に戻るクッションの性質は、わが国民の生き方そのものであり、 また国家の運営原理そのものでもある。

よって、われら主権者たるクッション族およびクッション共和国国民は、ここに国民の総意として、 本憲法を制定し、これを国家の最高法規として永久に遵守することを宣する。

本憲法は、千九百六十二年九月三日、首都ウール・ヤーワラカにおいて公布され、即日施行された。 これに先立つ千七百五十九年憲法および千八百三十六年憲法は、本憲法の前身として、その精神を本憲法に継承するものとする。

CHAPTER I

第1章 総 則

第1条国名・首都

本国の国名はクッション共和国とし、英文表記は Republic of Cushion とする。

首都はウール・ヤーワラカに置く。首都の移転には国民投票による過半数の賛成を要する。

第2条建国理念

本国は、軍事力・経済規模・国際的覇権の誇示を国家目的とせず、 国民および国土のやわらかさの保護を最優先の国家目的とする。

建国の父クッション・モチーィモッチによる独立宣言の一節 「我らは強さを誇るのではなく、やわらかさをもって民を守る」は、 本国の永久不変の根本理念である。

第3条主権

主権はクッション族およびクッション共和国国民にあり、国王はその象徴である。

第4条国制

本国の国制は立憲君主制とする。ただし国号は建国以来の伝統を尊重し、 「共和国」のまま据え置く。

第5条領土

本国の領土はクッション島本島およびその周辺の付属諸島 (ふわ島、子クッション島、双子岩、ヤワー岩、ほか公報に定める島嶼)から成る。

領海はクッション島本島の海岸線より十二海里、排他的経済水域はその二百海里とする。

第6条最高法規性

本憲法は国家の最高法規であり、これに反する法律、命令、詔勅、条約の全部または一部は無効である。

CHAPTER II

第2章 国 王

第7条王朝

国王はクッション家の正統な男系または女系の継承者から選出される。 王位継承の順序および要件は王室典範の定めるところによる。

第8条国王の務め

国王の務めは次の各号とする。

  1. 国民の悲しみを受け止め、国家を一つに保つこと。
  2. 国家の儀礼および国際的儀典において国家を代表すること。
  3. 毎年九月三日の建国記念日において、国民に向けたお言葉を述べること。
  4. 新年の元日において、国民に新たな年の祝意を表明すること。
第9条不政治性

国王は政治的決定を行わない。 但し国会および内閣の総意を、国家の象徴として儀礼的に体現することは妨げない。

第10条王宮

国王および王族の公邸は、首都ウール・ヤーワラカの王宮地区に置く。 王宮は年に二回、春分の日および秋分の日に一般公開される。

第11条退位

国王は自らの意思または医学的理由により、国会の承認をもって退位することができる。 退位後の国王は上皇と称される。

CHAPTER III

第3章 国民の権利と義務

第12条基本的人権

すべての国民は、個人として尊重され、生命、自由および幸福追求に対する権利を有する。 この権利は国家により最大限に尊重されなければならない。

第13条やわらかく在る権利

すべての国民は、生まれながらにしてやわらかく在る権利を有する。 この権利には、押されてもへこむ権利、力が抜ければ元に戻る権利、 および角を立てずに生きる権利を含む。

第14条平等

すべての国民は、出自、形状、ふくらみの程度、詰め物の素材、職業、信条、性別によって、 いかなる差別も受けない。

第15条表現の自由

言論、出版、集会、結社およびその他一切の表現の自由はこれを保障する。 検閲は永久にこれを行わない。

第16条信教の自由

信教の自由は何人に対してもこれを保障する。 国家は特定の宗教教育または宗教活動を強制しない。

第17条職業選択の自由

すべての国民は、職業選択の自由を有する。 クッション製造業への就労は奨励されるが、強制されるものではない。

第18条教育を受ける権利

すべての児童は、その能力に応じて等しく教育を受ける権利を有する。 初等教育の九年間は無償とし、クッション学を必修科目とする。

第19条勤労の義務

国民は勤労の権利を有するとともに、その義務を負う。 勤労の対価としての賃金は法律により最低水準を保障される。

第20条クッション義務

すべての国民は、年に最低一回、自らの身をクッションに委ね、休息する義務を負う。 この義務はやわらかさの維持のためであり、国家はこれを尊重し、これを妨げる労働環境を許さない。

第21条納税の義務

国民は、法律の定めるところにより納税の義務を負う。

CHAPTER IV

第4章 国 会

第22条立法権

国会は国の唯一の立法機関であり、国民の代表で構成される。

第23条構成

国会は単一院制とし、定員は280名とする。 議員の任期は4年とし、満期前に解散することができる。

第24条議員資格

議員は、満二十五歳以上のクッション共和国国民で、公民権を有する者から、 普通選挙により選出される。

第25条召集

国会は毎年九月に通常国会として召集される。 国王は内閣の助言により、必要に応じて臨時国会を召集することができる。

第26条議事公開

国会の議事は公開とする。 但し議員の三分の二以上の賛成があるときは、秘密会とすることができる。

第27条法律の議決

法律は、国会の議決により制定される。 法案は、出席議員の過半数の賛成をもって可決される。

第28条国政調査

国会は、国政に関する調査を行い、その実施に必要な証人の出頭および証言、 記録の提出を要求することができる。

第29条議事堂

国会の議事堂は、首都ウール・ヤーワラカに置く。 現議事堂は千九百六十五年、クッション革命三周年を記念して建設された。

CHAPTER V

第5章 内 閣

第30条行政権

行政権は内閣に属する。内閣は国会に対し連帯して責任を負う。

第31条内閣総理大臣

内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決により指名される。 国王はその指名に基づいて任命する。

第32条国務大臣

国務大臣は内閣総理大臣により任命される。 そのうち過半数は国会議員でなければならない。

ただし、クッション産業大臣については、クッション業界の実務経験を十年以上有する者から任命することを要する。

第33条内閣の不信任

内閣不信任案が国会で可決されたときは、内閣は十日以内に総辞職するか、 国会を解散しなければならない。

第34条内閣の事務

内閣は、一般行政事務のほか、左の事務を行う。

  1. 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
  2. 外交関係を処理すること。
  3. 条約を締結すること。但し事前または事後に国会の承認を要する。
  4. 予算を作成して国会に提出すること。
  5. クッション産業の保護および振興に関する施策を統括すること。
CHAPTER VI

第6章 司 法

第35条司法権

司法権は、最高裁判所および法律の定める下級裁判所に属する。

第36条裁判官の独立

すべての裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、 本憲法および法律にのみ拘束される。

第37条違憲審査

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則、処分が本憲法に適合するか否かを決定する権限を有する。

第38条公開裁判

裁判の対審および判決は公開法廷でこれを行う。 但し性質上公益を害するおそれがあるとき、または当事者の同意があるときは非公開とすることができる。

第39条死刑廃止

本国は死刑を永久に廃止する。 これは独裁時代における政治的処刑への反省に基づく、革命後憲法の不変条項である。

CHAPTER VII

第7章 財 政

第40条財政民主主義

国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。

第41条予算

内閣は毎会計年度の予算を作成し、国会に提出してその審議を受け、議決を経なければならない。

第42条租税法律主義

新たに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件によることを要する。

第43条クッション基金

国家予算の0.5%以上を、クッション産業基金として確保しなければならない。 この基金は、伝統技術の継承、職人の育成、世界遺産工場の維持に充てられる。

第44条会計検査院

国の収入支出は、毎年会計検査院がこれを検査する。 会計検査院は内閣から独立し、国会に直属する。

CHAPTER VIII

第8章 クッション産業

第45条基幹産業

クッション産業は本国の基幹産業として、特別の保護と振興の対象となる。 国家はその伝統技術および職人の地位を保護しなければならない。

第46条モチーィモッチ工場

国営クッション・モチーィモッチ工場は、世界遺産として永久に保護される。 いかなる事由があっても、本工場の取り壊し、移転、用途転換、私有化は許されない。

第47条国家戦略物資

ポリエステルおよびポリウレタンの高度加工技術は、本国の国家戦略物資として 法律の定めるところにより管理される。当該技術を国外へ譲渡する行為は、 内閣の許可なくしてこれを行うことができない。

第48条職人位

クッション製造技術の修得において卓越した者には、国家よりクッション職人位を授与する。 授与の基準および手続は法律で定める。

第49条品質保証

国内で生産されるクッションには、本国産であることを示す 「ヤーワラカ印」を付すことができる。 印の使用は、国家品質基準を満たした製品にのみ許される。

第50条クッション研究機関

ウール・ヤワラカ大学クッション学部および国立クッション研究所は、 本産業の学術研究および技術開発の中核機関として、国家の永続的支援を受ける。

第51条輸出管理

高級クッションおよび伝統工芸クッションの輸出は、国家品質基準を満たす場合にのみ認められる。 粗悪品の輸出は国家の名誉を損なう行為として法律により処罰される。

CHAPTER IX

第9章 国家の象徴

第52条国旗

本国の国旗はヤーワラカ旗とする。 上段マゼンタ(情熱の紅)、下段シアン(安寧の蒼)、 中央にベージュのクッション(国家の象徴)を配する。 縦横比は2:3。クッションは境界線をまたぐ位置に置かれ、いずれかの色域に完全に収まることは禁忌である。

第53条国歌

本国の国歌は「綿雲の誓い」とする。 建国から現代までを四節に凝縮した本歌は、千九百六十二年に現行版が制定された。

第54条国章

本国の国章は、国旗中央のクッションを単独抽出した紋章とする。 国章は政府公文書、公印、外交文書、本サイトのヘッダーに用いられる。

第55条国民の祝日

本国の主要な祝日は以下の通りとする。

  1. 元日(一月一日)
  2. 春分の日(春分日)
  3. モチーィモッチの日(六月十二日、建国の父の誕生日)
  4. 建国記念日/ふわふわ祭(九月三日)
  5. 革命記念日(九月二十一日、千九百六十二年の革命勝利の日)
  6. 秋分の日(秋分日)
  7. 世界遺産の日(十月七日、二千年の登録日)
第56条公用語

本国の公用語はモチ語とする。 ただし国際関係および学術においては英語の併用を妨げない。

CHAPTER X

第10章 改正および附則

第57条改正手続

本憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で国会が発議し、 国民投票において過半数の賛成を経たときに成立する。

第58条不可変条項

以下の条項は、本憲法の改正手続によっても変更することができない。

  1. 第2条(建国理念「やわらかさをもって民を守る」)
  2. 第39条(死刑の永久廃止)
  3. 第46条(モチーィモッチ工場の永久保護)
  4. 第52条から第54条まで(国旗・国歌・国章の規定)

これらは独裁時代の悲惨への反省と、革命の精神を恒久に保つための不変条項である。

第59条経過措置

千九百六十二年九月二日までに制定された法律、命令、規則および処分のうち、 本憲法に違反するものは、本憲法の施行と同時にその効力を失う。

第60条施行

本憲法は、千九百六十二年九月三日に公布、即日施行する。

本憲法はモチ語原本をもって正本とし、英語訳本を副本とする。 疑義があるときはモチ語原本の解釈に従う。